半導体製造⼯程の3割以上を占める洗浄⼯程には、不純物を極限まで除去した「超純⽔」が使⽤されています。そのため超純⽔を安定して確保することは、半導体製造においてとても重要です。

三菱ケミカルアクアソリューションズ㈱(MCAS)は、超純⽔の製造プロセスだけではなく、排⽔の再利⽤や⾦属回収など、⽔のトータルソリューションを半導体製造メーカーに提供しています。

――超純水 ー限りなく純粋な水ー

半導体製造の洗浄⼯程で超純⽔を使⽤するのは、⽔道⽔にはミネラル成分や塩素などの不純物が含まれていて、これらが半導体に付着すると回線ショートさせてしまう原因になるからです。昨今のハイグレードな超純⽔では、東京ドームに⽿かき1さじとも⾔われています。超純⽔はこれほど⾼純度なのです。

超純水とは

超純水とは:
超純水とは井水や水道水に含まれる不純物を限りなくゼロにした水です。有機物や微粒子、溶存ガスを除去し、イオンをHイオンとOイオンのみに近づける事で、半導体などの洗浄をしても微細な回路をショートさせることなく清澄度を保つことが可能になります。

【不純物の一例】よく50mプールで例えることがあります。
・水道水  不純物の量ドラム缶2本~数本分
・純水   不純物の量はコップ1杯分
・超純水  不純物の量は耳かき1さじ分

――さまざまなろ過技術を結集

半導体製造メーカーの純度への要求は⾮常に⾼く、MCASでは複数のろ過技術を組み合わせ、製造現場ごとに最適な超純⽔の製造プロセスを設計し、提供しています。さらに、メンテンナンスを含む⼀貫体制で品質を維持し、お客様をサポートしています。

【豆知識】
ろ過膜は、膜表⾯に微細な孔があいており、孔径より⼤きな物質を取り除きます。孔径の⼤きい順に、MF膜(精密ろ過膜)、UF膜(限外ろ過膜)、RO膜(逆浸透膜)などがあります。浄⽔器「クリンスイ」に使われている中空⽷膜はMF膜で、RO膜はイオンや塩類など⽔以外の不純物を透過しないため、海⽔を真⽔にする際にも使われます。

――さらなる純度を追求するために

半導体の⾼度化が進むにつれ、半導体は益々⼩さくなり、⼩さくなればなるほど、洗浄で使⽤する⽔の基準も厳しくなります。求められる基準の超純⽔を実現させることは、MCASにとってそれほど難しい課題ではありませんが、限りなく無に近い⽔質基準を満たしていることを担保するための⽔質分析検査にも⾼度な技術を要します。そのためMCGグループの半導体ビジネスに係わる部署や外部機関と連携し、分析技術の確⽴に取り組んでいます。

――求められる温室効果ガス(GHG)削減

半導体製造メーカーにとってもGHG削減は優先すべき課題です。MCASはそういった要望にも応えるべく、純⽔処理の⼯程を徹底的に改善し、最も電⼒を消費するRO膜によるろ過⼯程を減らすプラント設計技術を確⽴しました。これにより運転エネルギーだけではなく、コスト削減も実現しました。

――超純⽔製造プロセスの⽐較(プロセスの⼀部)

※略称説明
CF(Cartridge filter):カートリッジ式フィルター
RO(Reverse osmosis):逆浸透膜ろ過(RO膜ろ過)
EDI(Electro deionization):電気脱イオン処理。電気とイオン交換膜、イオン交換樹脂を使⽤して不⽤なイオンを除去する電動式⽔処理技術

――排⽔と有価⾦属のリサイクル

半導体の製造には、1⼯場で、1⽇最低でも20万t(⽔道⽔なら約67万⼈の給⽔規模)の⽔が必要です。特に海外では⽔害やハリケーンの影響を受けにくいことを優先し、⽔源が乏しい乾燥地帯を⽴地として選ぶことが多く、徹底した⽔リサイクルが安定操業の前提となります。そのため排⽔を有効活⽤し、貴重な⽔資源として再利⽤する技術を有しているかが、半導体製造メーカーに対してキーポイントになります。また、半導体⼯場の排⽔には、製造で使⽤した銅やレアメタルなどの有価⾦属が含まれています。これらの有価⾦属を回収する技術を含む⽔循環サービスを提供できることは、排⽔処理技術を持つMCASの⼤きな強みとなり、超純⽔製造+排⽔処理の組み合わせで⼤型案件受注につなげています。

今後も半導体の需要増や微細‧多層化により、⼀層の⽔質の⾼度化や⽔量増が⾒込まれます。MCASはコスト削減や排⽔リサイクル、資源リサイクルに加え、GHG削減の価値も提供できる技術開発を⾏い、半導体関連の⽔処理をトータルサポートしていきます。

プロジェクト始動!

MCASでは、半導体ビジネスでさらに市場を開拓し、事業を成⻑させるため、新プロジェクト「Information and Electronics Field(IEF)」を⽴ち上げました。営業や研究‧開発、設計などさまざまな部署よりメンバーが集まり、超純⽔装置の設計‧施⼯‧運転などの事業で培ったノウハウを結集して、新技術の獲得や海外展開に向けて活動しています。さまざまな専⾨技術をもつメンバーが集結したことで、案件ごとに各部署から⼈員を確保する必要がなくなり、スピーディに対応できるようになりました。

<プロジェクトメンバー>

  • 半導体製造を水で支える

    佐藤 朋法

    エンジ技術統括室 エンジニアリング部 プロセス技術G
    プロジェクトでは、主に基本設計とコストの⾒積りを担当しています。超純⽔に要求される最先端の⽔質に対応できるよう新技術の開発も⾏っています。超純⽔の分析は微量の不純物を検出しなければならないという難しさがありますが、外部の分析機関とタッグを組んで、分析技術の開発にも取り組んでいます。

    ●⼤切にしていることはワークライフバランス。⼤型案件を短納期で対応することが多く、バランスが崩れがちなので、ひと段落ついた時にはきちんと休むようにしています。

  • 半導体製造を水で支える

    橋⽥ 拓哉

    経営企画室 IEFプロジェクト
    基本設計やコスト⾒積りが主務ですが、営業的な役割も担っています。お客様の要望をきちんと把握し、それを設計に反映して応えています。旺盛な半導体産業に対応するため、若いメンバーが増え、プロジェクトが活気づいているのは嬉しいです。

    ●⼤切にしていることはお客様の⽬線で常に考え、提案すること。