人々の暮らしを支える「水」。災害時に真っ先に必要になるものは飲み水ですが、水道管がダメージを受けた場合、復旧までに1か月もの時間を要すると言われています。こうした現状を受け、三菱ケミカルアクア・ソリューションズでは、井からくみ上げた地下水を処理し、安全・安心な飲料水として供給するサービス「地下水活用膜ろ過システム」を展開する上で、天然資源である地下水の適正な管理と効率的な鑿井を行うために、地下水の流れを可視化する「地下水流動解析システム」の実用化に向けて取り組んでいます。

 今回は、本プロジェクトに携わる4人の女性研究員や技術者に、それぞれの仕事内容、働き方、今後の目標について語ってもらいました。

「地下水活用膜ろ過システム」についてはこちらをご参照

<参加者>

  • 目指すのは「水に困ることがない世界」地下水流動解析システム開発プロジェクト女性技術者・研究員座談会!

    長井千里

    技術統括室
    技術管理部 応用解析グループ
    「地下水流動解析システム」プロジェクトのチームリーダー

  • 目指すのは「水に困ることがない世界」地下水流動解析システム開発プロジェクト女性技術者・研究員座談会!

    古谷裕子

    技術統括室
    技術管理部 応用解析グループ

  • 目指すのは「水に困ることがない世界」地下水流動解析システム開発プロジェクト女性技術者・研究員座談会!

    森本紗代

    技術統括室
    秋津研究センター 研究員

  • 目指すのは「水に困ることがない世界」地下水流動解析システム開発プロジェクト女性技術者・研究員座談会!

    落合みちる

    プラント技術室
    地下水技術部 設計グループ

――まずは皆さんの経歴と、現在の仕事内容について教えてください。

長井

長井: 専門は地質学です。もともと登山が好きで、大学時代にフィールドワークができるという理由から入ったのが地質学の研究室でした。中途入社なのですが、前職では鉱山から流出した汚染水の処理を行っていたこともあります。現在は、「地下水流動解析システム」プロジェクトのチームリーダーとして、水循環基本法が定める地下水マネジメント推進に向けて、地質情報や地下水データを集め、前職での経験を活かして地下水流動解析技術の開発に取り組んでいるところです。

古谷

古谷: 学生時代、考古遺物の化学分析を専門に行っていました。その中で分析結果を如何に活かすかという事に重きを置くようになり、水質分析から装置設計・施工・オペレーションまで自社で行う当社にたどり着きました。当初は技術営業だったので、営業職として各地を巡る中で、周辺に井戸があっても、あるポイントでは水が出ない/水質が悪いなど偏りがあることが見えてきました。そこで、目には見えない地下水の水循環を何とか可視化できないかと活動をしていたことから、この地下水流動解析システム開発のプロジェクトに携わることになりました。

森本

森本: 学生時代の専攻は、いわゆる“ドボジョ”(※土木女子の略。土木業界で活躍する女性たちに対する愛称)で土木系の専攻でした。大学の修士論文で地下水の浄化技術開発に取り組んでいたことがご縁で、本プロジェクトにつながりました。いまは東村山にある秋津研究センターで、実際にお客様が導入した際に使いやすいよう、よりシンプルで管理しやすいシステムの開発に向けて取り組んでいます。

落合

落合: 私は大学の研究室で排水の生物処理を行っていたことからこの仕事に興味を持ちました。いまは主に、地下水プラントの設計を行っていて、地下水の水質の事前予測の高度化に向けて取り組んでいます。地下水は目に見えないため、弊社の「地下水活用膜ろ過システム」をお客様に提案する際には、事前に水質を予測する必要があるんですね。この予測技術を高度化すれば実際に井戸を掘った際に「事前に予測していたよりも水質が悪くて使えなかった…」などのギャップがなくなり、損失を防ぐことにもつながります。

――プロジェクトを進める中でやりがいを感じるのはどんな時でしょうか。

長井: まだ実用化に向けて動いている最中ではありますが、ゆくゆくはコストメリットが大きくなり、お客様に還元できるというやりがいも生まれると考えています。自分が開発した技術がカタチになり、実際に使われることは最大の喜びですね!個人的には、専門分野で仕事ができていることが楽しくて、自分が予測した地下水の水質が予測値通りだったときなどにも日々喜びを感じています。

古谷: 私にとっては、社会貢献に繋がっている事を感じながら仕事ができることです。いま、日本だけでなく世界中で異常気象が起こっており、パキスタンでは洪水で国土の1/3が水没してしまっている一方、ヨーロッパやアメリカでは干ばつによる節水措置が取られています。このように異常気象が日常になりつつある中、これまでと同じような水の使い方が出来なくなってきています。私たちの取り組んでいる地下水流動解析で水循環を確認できれば、適正な水循環への足掛かりになるかもしれないー。そんな展望が見える仕事ができていることがやりがいです。

森本: 私はちょっと違う視点で、自分が生み出したものをお客さまに納入してから「呼ばれなくなった」ときにやりがいを感じますね。初めのうちはトラブルが続いて、頻繁に呼び出されることも日常茶飯事なのですが、呼ばれなくなるということは、システムがきちんと動いているということ。わが子が巣立っていくような喜びがあります。

落合: 森本さんのやりがいが「巣立ち」だとすると、私にとってのやりがいは「誕生」ですね。図面上で設計していたものが実際に完工して、それがきちんと動いて、想定していた数値が出て…というときに達成感を覚えます。

――職場環境や働きやすさについてはいかがでしょうか。

古谷: もともとフレックスなどの制度は整っていたのですが、コロナ禍以降テレワーク制度が導入されたことで、子育て中の社員にとって更に働きやすくなりました。私自身も昨年2人目を出産して、つい最近復職したばかりです。

長井: 私は何社か経験していますが、今が一番働きやすいですね。上長を含めて部署内に子育て中の社員が多いので、子どもを病院に連れていくために抜けたり、早めに退社したいときにも調整しやすい環境ですし、ときには金曜日に早めに仕事を終わらせて、そのまま旅行に行く、ということもしていますよ。

森本: 男性が多い業界ですが、部署によっては以前と比べて女性社員が増えていることも、働きやすさの象徴かもしれません。男性の上司が子育て中で、育休や有休など社内の制度を率先して利用していて、かつ私たちにもそれを奨励してくれるので、とてもありがたいですね。

落合: 私が所属している部署も、上司が先進的なので、残業が多いときはフレックスを活用して半日休みを取ったり、金曜日に早上がりをしたりと、働きやすい環境です。

――皆さんのリフレッシュ方法について教えてください。

長井: 独身の頃は山に登ったり、走ったりしていたのですが、いまは子どもに手がかかるのでなかなかそうもいかなくて。ただ、夫が子どもを見てくれている間に台所を一生懸命掃除したり、子どもの持ち物に名前を付けたり、無心になっている瞬間がリフレッシュにつながっているかもしれません。

古谷: 私は家族でゆっくり、家で過ごす時間かな。我が家もまだ子どもが小さいことと、コロナ禍の影響もあってなかなか外に出かけにくい環境ということもあって、いまはだらだらごろごろ、みんなで過ごす時間が幸せです。夫に子どもを預けられそうなときは走ったり、ヨガに行くこともありますよ。

森本: 私の場合は、デスクワークが多いときは外に行ったり、人と会うことが多かった日は引きこもったり。日常とは違うことをやることでバランスをとっているんだと思います。ストレスがたまると部屋中を一気に掃除することも。私も子どもがいるので、休日は家族で過ごす時間がメインですが、もちろんそれも仕事とは違う“非日常”の幸せな時間ですね。

落合: 私は独身ですが、最近実家で飼いはじめた生後8か月の子猫が本当にかわいくて…。毎週末のように実家に帰っては写真をたくさん撮って、平日はその画像を見てエネルギーを補充しています。

長井: 私も職場に向かう電車の中で、子どもの写真を見ていることがあります。そんな時間も癒しになっていますね。

――最後に、今後の目標やこれからやってみたいことがあれば教えてください。

長井: 繰り返しになりますが、まずはやはりいま手掛けている「地下水流動解析システム」プロジェクトをカタチにして、実用化すること。それが実現して完全に私の手を離れたら、他の事業部と協働で、まったく違う分野の仕事にも挑戦してみたいですね。

古谷: ちょっと壮大かもしれませんが、最終的には「水で困ることがない世界」を作りたいという夢があります。そのための第一歩になるのが、いま私たちが取り組んでいる「地下水流動解析システム」になるのでは、と思っているんです。 このプロジェクトが実用化して、水の循環が把握できるようになったら、今度はまた別の課題が出てくると思いますが、一つひとつ課題を解決できるような会社にしていけたらいいなと考えています。

森本: 10年近くこの仕事をしていますが、まだまだわからないことがたくさんあるので、これからも勉強しなければいけないなと思いながら仕事をしています。将来、私たちがしてきた仕事を、息子の恋人やお嫁さんに「俺の母ちゃんさ…」って自慢してもらえたら嬉しいですね。

落合: まずは皆さんと同じように、このプロジェクトを実用化させて、実際の設計に役立てたいということが最大の目標です。次の目標としては、新しい技術を活用して、どんどん設計に取り入れられたらいいなと思っています。現在は飲用水の処理に特化していますが、例えば排水など、含まれている成分が変われば処理方法も変わりますし、知らないことがたくさんあるので、もっと学んでいきたいです。